節分にまつわる家族の話です。
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私の父は、10年前の今日、
節分の日に空へと旅立った。


つい最近の出来事のような気が
するけれど、
私の娘は、仏壇にいる父しか知らない。

そのことが、なんだか不思議。

その時私は、妊娠8か月。
だから娘が父を知らないのは
あたり前なんだけどね。

当時、入院中の父をお見舞いに行くたび、
「いつ生まれる？」「4月だよ。」
「春か。」「春だよ。」
という会話を父と繰り返していた。

孫の顔を見るのが楽しみなんだろう
と、思っていた。

でも父は、
4月を待たず、春を待たず、旅立った。


悲しみの中のお通夜。

その枕経の最中に、
ふっと、部屋に光が射した。

なんてことはない、自然現象に、
私は、父の魂を感じ、
「あっ。」と上を向いた。

すると、
同じように上を向いた母が
そこにいた。

ああ、私は、
この父とこの母から生まれた娘に
間違いない。

と確信し、何とも言えない
幸せな瞬間を味わった。

悲しみを乗り越えた瞬間でもあった。




その2か月後、


父が旅立った同じ病院で、
私は、出産に挑んだ。



父に顔を見せてあげたかった。
父に抱かせてあげたかった。
　　
その思いは叶わなかった。

でも、

あれ？もしかしたら、、

お腹の中のこの子は、
父にそっくりな顔で出てくるのでは？

「おう、久しぶり。」なんて言いながら
生まれ変わって出てきちゃうのかもよ？



辛い陣痛を紛らわすためか、
根っからの楽天家なのか、
分娩台の上で私は
そんなことを考えていた。


父との再会を楽しみに、
痛みに耐え、

ようやく顔を出し、
元気な産声をあげたわが子。

その顔は、、、


あれ？？
お父さん、いや、お義父さん!


旦那の父の顔だ！

父は父でも、旦那の父！
なんとなんとのこの裏切りは、

「夫婦、仲良くしろよ。」という、
父からのメッセージか。

私の勝手な妄想も、
なかなか良いことを運んでくれた。


そんなこんなで、
父との思い出を振り返る
節分の日。


節分は、春の訪れを意味するらしい。

「ほら、言う通り、春まで生きただろ。」
頑固な父の、そんな理屈が聞こえてくる。


「鬼はそと！」

「福はうち！」


夜にはきっと、
娘たちは旦那の実家で豆をまく。


「夫婦、仲良くやってるよ～。」
今日は父に報告しに行こう！



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